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大西 弘明; 堀田 貴嗣
AIP Conference Proceedings 850, p.1075 - 1076, 2006/09
最近、三角格子コバルト酸化物の超伝導が見いだされ、その特異な性質が注目を集めている。また、関連物質では磁気相転移が観測されているが、そうした多彩な振る舞いの起源として、三角格子上での軌道自由度の効果が盛んに議論されている。本講演では、三角格子上の軌道縮退ハバード模型の基底状態を、電子密度5.5の場合について、厳密対角化法によって解析した結果を報告する。まず、非磁性相では、三軌道のうち一軌道あるいは二軌道が完全に占有され、軌道自由度が部分的に抑制されることがわかった。また、隣接サイト間クーロン相互作用によって電荷秩序状態が安定化されるが、そこでは直線状に電化が整列したいわゆる電荷ストライプ構造を取ることがわかった。
大西 弘明; 堀田 貴嗣
Physica B; Condensed Matter, 378-380, p.589 - 591, 2006/05
被引用回数:1 パーセンタイル:6.64(Physics, Condensed Matter)幾何学的フラストレーションのある最も基本的な格子として、三角構造からなるジグザグ鎖を取り上げ、そこでの軌道自由度の効果を明らかにするために、軌道ハバード模型の基底状態を密度行列繰り込み群法によって解析した。まず、二軌道が縮退している場合は、スピンフラストレーションを解消するような軌道状態を取る。一方、二軌道間のレベル分裂がある場合は、低エネルギーレベルの軌道が占有されやすくなり、レベル分裂の大きさに応じて軌道状態が連続的に変化していくことがわかった。また、軌道異方性の変化に応じて、スピン状態の不整合性にも変化が生じることがわかった。
堀田 貴嗣
Physical Review Letters, 96(19), p.197201_1 - 197201_4, 2006/05
被引用回数:40 パーセンタイル:81.37(Physics, Multidisciplinary)動的ヤーンテラーフォノンと結合する軌道縮退アンダーソンモデルに基づいて、非磁性近藤効果の新しい発現機構を提案する。ヤーンテラーフォノンと動的に結合する電子系の基底状態は、二重縮退のあるバイブロニック状態であるが、この縮退は、円錐型特異点まわりの時計回り及び反時計回りの回転自由度に由来する。回転方向を変えるために必要なエネルギーよりも温度を下げると、ついには回転自由度が失われ、のエントロピーが解放される。これが擬似的な近藤効果をもたらすことを数値繰り込み群法によって示す。動的ヤーンテラーフォノンによる非磁性起源の近藤現象と、充填スクッテルダイト化合物におけるラットリングに起因した特異な電子物性との関連を議論する。
Xavier, J. C.*; 大西 弘明; 堀田 貴嗣; Dagotto, E.*
Physical Review B, 73(1), p.014405_1 - 014405_9, 2006/01
被引用回数:9 パーセンタイル:41.55(Materials Science, Multidisciplinary)一次元軌道ハバード模型の基底状態におけるスピン・電荷・軌道相関関数を、相互作用パラメータ及び電子数を変化させた場合について、密度行列繰り込み群法を用いて系統的に解析した。まず、コバルト酸化物を念頭に、電子数=5の場合について調べた。その場合、相互作用の大きさを変化させると、非磁性絶縁相と強磁性相の間で一次相転移が起こることがわかった。また、フント結合がゼロの極限では対称性が存在するが、フント結合が弱い領域でも、この特殊な対称性の名残として、四倍周期のスピン・軌道状態が実現することがわかった。さらに、電子及びホールドープによって電子数を=5から変化させた場合には、絶縁的な状態から金属的な状態へと変化することがわかった。
大西 弘明; 堀田 貴嗣
Physical Review B, 71(18), p.180410_1 - 180410_4, 2005/05
被引用回数:5 パーセンタイル:26.14(Materials Science, Multidisciplinary)軌道縮退ハバード模型の基底状態及びスピン励起状態を密度行列繰り込み群法によって解析し、ジグザグ鎖と梯子格子の場合の比較から、幾何学的フラストレーション系における軌道自由度の役割を調べた。いずれの格子でも強的軌道状態を取るが、梯子格子では二本脚間のスピン相関が残るのに対して、ジグザグ鎖では、スピンフラストレーションを解消するような異方的軌道状態を取り、二本の一次元反強磁性鎖が弱く結合した系と見なせることがわかった。また、ジグザグ鎖では軌道揺らぎが小さく、異方的な交換相互作用を持つ有効スピン模型によって、低エネルギーでのスピン状態が理解できることを示した。
堀田 貴嗣
Physica B; Condensed Matter, 359-361, p.1003 - 1005, 2005/04
被引用回数:1 パーセンタイル:6.23(Physics, Condensed Matter)充填スクッテルダイト化合物の磁気的性質を理解するために、軌道自由度のあるアンダーソン模型の磁化率を数値繰り込み群法によって計算した。その結果、Prイオンを含む充填スクッテルダイト化合物で実験的に示唆されているように、局所基底状態がであっても、がわずかなエネルギー差で励起状態として存在していれば、磁気揺らぎが顕著に残ることを見いだした。
大西 弘明; 堀田 貴嗣
Physica B; Condensed Matter, 359-361, p.669 - 671, 2005/04
被引用回数:3 パーセンタイル:17(Physics, Condensed Matter)軌道縮退ハバード模型の基底状態及びスピン励起状態について数値的解析を行い、ジグザグ鎖と梯子格子の場合の比較から、幾何学的フラストレーション系における軌道自由度の効果について議論する。梯子格子では、二本脚間のスピン相関が残り、スピンギャップが存在するのに対して、ジグザグ鎖では、軌道秩序によってスピン相互作用のフラストレーションが抑制され、二本の一次元反強磁性鎖が弱く結合した系と見なせるため、スピンギャップはほぼゼロとなることがわかった。
大西 弘明; 堀田 貴嗣
New Journal of Physics (Internet), 6(1), p.193_1 - 193_16, 2004/12
アクチノイド化合物の複雑な磁気構造を微視的観点から理解するために、軌道自由度の重要な役割について議論する。ここで取り上げる典型的な物質はUTGa及びNpTGa(Tは遷移金属イオン)である。アクチノイド化合物における軌道とスピンの意味を明らかにするために、まず、結合描像と比較しながら、-結合描像に基づく局所的な-電子状態の構成について議論する。そして、アクチノイド化合物の磁気構造を調べるために、-結合描像に基づく軌道縮退ハバード模型を与える。厳密対角化法によってこのモデルハミルトニアンを解析して、さまざまな磁気構造を含む相図を得る。UNiGaとUPtGaでは、異なる反強磁性磁気構造が実験で見いだされているが、軌道自由度に基づくシナリオによってその違いを理論的に説明する。また、NpTGa(T=Fe, Co, Ni)における3種類の反強磁性相(C-, A-, G-型)の出現についても議論をする。
大西 弘明; 堀田 貴嗣
Physical Review B, 70(10), p.100402_1 - 100402_4, 2004/09
被引用回数:3 パーセンタイル:19.92(Materials Science, Multidisciplinary)整数スピン一次元ハイゼンベルグ型反強磁性体(ハルデン系)は、強い量子スピン効果によって生じるスピンギャップ状態が興味を持たれ、理論実験の両面から盛んに研究されている。本論文では、=1ハルデン系における軌道自由度の効果を調べるため、軌道縮体ハバード模型一次元鎖の基底状態を数値的手法によって解析した。フント結合が小さい場合は、反強磁性/強的軌道状態をとるが、これはスピンギャップのあるハルデン状態に対応している。一方、フント結合を大きくしていくと、ギャップレスの軌道励起を持つ強磁性/反強的軌道状態への相転移が起こることがわかった。
堀田 貴嗣
Physical Review B, 70(5), p.054405_1 - 054405_10, 2004/08
被引用回数:17 パーセンタイル:61.26(Materials Science, Multidisciplinary)微視的な観点からウラン化合物の磁気構造を理解するために、軌道自由度の役割を議論する。典型物質としてはUMGa(M=Ni, Pt)及びUGaを取り上げる。f電子系における軌道とスピンの意味を明らかにするために、まず、局所的f電子状態に対する-結合描像の妥当性を検討する。そして、ウラン化合物の磁気構造を調べるための理論モデルとして、-結合描像に基づいて構築された軌道縮退ハバード模型を提案する。立方晶の場合にこの模型を数値的手法で解析し、AuCu構造を持つウラン化合物に対する実験結果と定性的に一致する相図を得る。さらに、正方晶の効果を取り入れて、UNiGaとUPtGaで見られるG-型からA-型への磁気構造の変化を説明する。最後に、ここで述べた微視的理論の将来の課題について議論をする。
堀田 貴嗣; Dagotto, E.*
Physical Review Letters, 92(22), p.227201_1 - 227201_4, 2004/06
被引用回数:40 パーセンタイル:80.89(Physics, Multidisciplinary)層状ニッケル酸化物の基底状態の性質を、格子歪みと強く結合した軌道縮退ハバード模型に基づいて、数値的手法を用いて研究した。まず、ドープしていない極限=0において、スピン=1から成るネール状態が現われることを示した。次に、=1/2の場合、フント結合を大きくしていくと、CE-あるいはE-タイプと呼ばれる反強磁性状態が現われることを明らかにした。このとき、系は市松模様の電荷整列状態となるが、(/)-タイプの軌道秩序も同時に現われることが理論的に予言される。さらに、=1/3の場合、クーロン相互作用がスピンストライプを安定化させ、電子格子相互作用が電荷ストライプを生じさせることを見いだし、両方の相互作用が重要であることを明らかにした。
瀧本 哲也; 堀田 貴嗣; 上田 和夫*
Physical Review B, 69(10), p.104504_1 - 104504_9, 2004/03
被引用回数:152 パーセンタイル:96.83(Materials Science, Multidisciplinary)軌道自由度のある系における超伝導を議論するために微視的なハミルトニアンを導入する。この軌道縮退モデルに基づいて、超伝導の強結合理論を揺らぎ交換近似(FLEX近似)の範囲内で展開する。軌道縮退モデルにFLEX近似を適用すると、軌道分裂エネルギーの増大によりスピンゆらぎは増強される一方で軌道ゆらぎは抑制されるため、-波超伝導が誘起される。これにより、われわれは軌道分裂エネルギーが-波超伝導の出現を制御するパラメーターになっていることを提案する。
瀧本 哲也; 堀田 貴嗣; 上田 和夫*
Journal of Physics; Condensed Matter, 15(28), p.S2087 - S2093, 2003/07
被引用回数:14 パーセンタイル:57.88(Physics, Condensed Matter)軌道縮退のある系では軌道自由度とスピン自由度の結合効果により、さまざまな興味深い現象の出現が期待されている。特に、そのような系の超伝導については、クーパー対形成や発現機構等に関して、軌道自由度が重要な要素の1つになっていると考えられる。一方、重い電子系超伝導物質中の準粒子は、f-電子の大きな軌道縮重度のために潜在的な軌道自由度を持っていると考えられる。われわれは、軌道縮退のある系における超伝導を扱うために、軌道自由度を有する微視的なf-電子モデルにゆらぎ交換(FLEX)近似を適用した。これにより以下のような結論が得られた。(1)反強磁性相の隣にd-波の対称性を持つ超伝導相が出現する。(2)2つの軌道のエネルギー分裂の増大に伴って超伝導転移温度が増大する。これらから、軌道のエネルギー分裂は、反強磁性からd-波超伝導への転移をコントロールするパラメーターであることが帰結される。
堀田 貴嗣; 上田 和夫
Physical Review B, 67(10), p.104518_1 - 104518_16, 2003/03
被引用回数:87 パーセンタイル:93.31(Materials Science, Multidisciplinary)-電子系に対する微視的模型を- 結合描像に基づいて構築する。得られた模型は、-電子のホッピング項,クーロン相互作用項,結晶場項から成るが、2のスピン自由度と3つの軌道自由度を有する軌道縮退ハバードモデルとみなすことができる。実用上は、3つの軌道のうち1つを捨てることでさらに簡単化された2軌道モデルが便利である。ここでは、その内の1つの模型を厳密対角化法で解析し、さまざまな相関関数を測定することによって基底状態の性質を調べる。その計算結果を、最近発見された新しい重い電子系超伝導体CeMIn(M=Ir, Rh, Co)の実験結果と比較する。さらに、CeMIn,UMGa,PuCoGaなどの115系と総称される-電子化合物の超伝導及び反強磁性を微視的な観点から理解する包括的なシナリオを議論する。